同人ゲーム著作権コラム②題名・画像・リンク。それって著作権ある?

 同人ゲーム制作者が著作権について勉強しながら「これはどうなの?」と考えるコラム、第2弾です。

 ゲームに関わりそうなところを中心に取り上げますが、「ゲームの著作権」に直接言及した書籍や項目はほぼありませんでした泣。ですので前半でひたすら文献を引用して著作権について学んだ後、後半で「ゲームの実例に当てはめたらどうなるだろう……?」と考察する流れになります。

第1回の記事から半年近く経ってるよね……

しかもブログ移転したしな。
月どころかブログまたいでるよ。

 すんません。


そもそも著作物の対象ってどこまで……?

 著作権コラム2つめだけど、そもそも著作権が発生するのってどこまでなの?
 というか、著作物って何?!

著作物とは

 著作権法によると「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(2条1項1号)とあります。一言ずつ説明すると……

①『思想又は感情を』
単なる統計データなどは著作物にならず、何かしら伝えたい考えなどが込められている必要があります。

②『創作的に』
オリジナリティがあるもの。≠独創性ですので、目新しさが必要という意味ではありません。

③『表現したもの』
内に留めているうちは著作物ではありません。形にして初めて著作物となります。

④『文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの』
工業的な技術などは著作物ではありません。特許を取ってね。

 著作物にはもれなく著作権が発生します。(著作権の概要は前回の記事で説明しています)
 しかし自分が生み出したものでも、実は著作物には当たらない場合が結構ある!!

実は著作物とならないもの

小説などの題名やキャッチコピー

 単語の組み合わせやありふれた文章であることが多いため、創作性があるとはいえません。

 歌の題名も同様ですが、一方で歌詞は単語の羅列ではなく文章に近いため、創作性があり著作物と認められます。そのため、歌詞の一部から取られた題名の場合著作権が発生することがあります。

 しかし単語の組み合わせでも、独創性が認められれば著作権が発生します。この境目難しい。

 とりあえず誰にでも思いつくようなありふれたものであれば著作権は発生しないと考えていいようです。

 同じ題名の別の作品を出しても著作権には引っかかりません。しかし先行の作品と関連があるように誤解させるような付け方の場合は、不正競争防止法という別の法に引っかかる可能性があります。(例:赤の他人による「続・スターウォーズ」など。)

作品へのリンク

 リンクを貼ってもリンク先のコンテンツを複製・掲載しているわけではなく、URLそのものにも創作性は認められないため著作権は発生しません。

 リンクフリーとか無断リンクという言葉がありますが、リンクを貼る行為自体は本来無許可で行ってもよいことです。

実は著作物となるもの

写真

 写真には撮る過程で、被写体やレンズの選択、構図など個性を発揮させる要素が多く含まれるため、創作性が認められます。これは素人の写真でも同様です。

 逆にプロが撮ったものでもなんの工夫もなく適当に撮った写真、空などありふれた写真には創作性がないとされます。 

 文字と違って、イラストや写真などデザイン物は基本著作権が発生すると言っていいようです。

ゲーム画面のスクリーンショット

スクリーンショットに著作権はあるのでしょうか?

著作権法上適法にアップロードされた著作物については、私的使用の目的でのスクショであれば、今回の法改正においても今までと同じように著作権の制限規定の対象であり、原則違法とはなりません
但し、従来もそうでしたが、他人の著作物の一部を切り取ってスクショするような場合は、スクショの仕方によっては、著作者の人格権を守るために設けられている、自分の著作物を勝手に変更・切除等されないという権利である同一性保持権の侵害になる可能性はあります。

弁護士の著作権情報室:スクリーンショット(スクショ)って自由にしてよいの? |イノベーションズアイ BtoBビジネスメディアより抜粋

 「他人の著作物の一部を切り取ってスクショ」という説明から考えると、スクショも元となる作品の一部であり、著作物と考えて良さそうです。

 その上で例えば、スクショを利用してサイトのバナーを作ったり、実況動画のサムネイルを作成するためにスクショを切り貼りすることは、無許可の場合、著作権(同一性保持権)の侵害になる可能性があるということでしょう。

利用規約

 プライバシーポリシーや利用規約にも著作権は存在します。類似サービスの文面を参考にするのは大丈夫ですが、全体を丸ごとコピーしてしまわないよう気をつけましょう
 規約に関しては、過去に著作権が認められた裁判例があります。

出典:「著作権トラブル解決のバイブル!クリエイターのための権利の本」株式会社ボーンデジタル、2018年 152頁

 だそうです。丸ごとコピーしてしまわないよう気をつけましょう。

納品されたイラストや楽曲

「お金を払ったから成果物の著作権もクライアントのもの」とは限りません。基本的に、著作権の持ち主はクリエイターです。ただし、著作権は譲渡することもできます。成果物の権利はクリエイターとクライアントのどちらが持つのかを、契約書で明確に示しておくべきです。

(中略)

もし、メールや口頭でのやりとりでも著作権の話はしていなかった、とすれば著作権法のルールが適用されます。

出典:「著作権トラブル解決のバイブル!クリエイターのための権利の本」株式会社ボーンデジタル、2018年 122頁

 クリエイターによっては、やりとりの際に「何に使うものか」「どこに載せる予定か」などを聞かれる場合があります。契約の際は想定される用途をなるべく伝えることと、想定外の場所で使う場合は確認を取ると安全かと思います。

 クリエイター側に著作権がある場合、無断で納品物に改変を行うと著作権侵害になります。

(例:イラストの一部を切り貼りする、配置を変える、追加で描き込むなど)

 たとえば切り貼りのような、イラストを素材のように扱うと、追加で使用料を要求するデザイナーさんもいらっしゃいます。これに関しても、事前にクリエイターさんに確認を取ることでトラブルを防ぐことができるかと思います。

手紙やツイッターのDM

同人誌に掲載された小説を絶賛する手紙を作者に送って、それに対して返信された手紙は、その作者自身の思想・感情を創作的に表現したものであることはいうまでもありません。
したがって、特定の人物に送られた私信といっても著作物にあたるわけですから、作者からの手紙を自分のブログで公開するためには、作家本人の許諾を受けなければなりません。

出典:森公任/森元みのり監修「すぐに役立つ 改正対応 著作権・コンテンツビジネスの法律とトラブル解決マニュアル」三修社、2018年 55頁

 つまり事務的な内容ならともかく、思いがこもった私信は著作権があるということです。

 また次の記事で説明しますが、著作物でも引用という方法を取れば掲載することが可能です。他人の著作物を適法に引用するには、それがすでに公表されたものでなければいけません。

Q59 個人から個人に贈られた手紙は、公表された著作物にあたりますか。
A その段階では、公表にあたりません。

出典:北村行夫・雪丸真吾編「Q&A引用・転載の実務と著作権法 第5版」中央経済社、2021年 81頁

 例えばDMの内容は公表物ではないので、著作権はあってもそこから勝手に引用することはできません。
(いろんな文献あさると、「トラブル時にDMの内容をスクショして勝手に載せるのは法的に不利になる」って書いてありました……)


 上記のルールに則って著作権の発生するものは、転載も素材利用も実況も、原則NGとなります。

 NGがベースである上で、「この範囲でだけなら利用を許可するよ」と限定的に許可しているのが利用規約(ガイドライン)だといえます。

ゲームの具体例で考えてみる

 ここからは他人の作ったゲームについてよく起こる例を挙げて考えてみます。

 ゲームの著作権について直接扱っている文献は、皆無に等しかったです。そのため文献で得た知識をゲームに当てはめて「こういうことか?」と想像するしかありません。

 つまり、あくまで素人の想像のため自信がありません!もし間違いなどあったらご指摘ください……!

 あくまで参考程度に……

自分のブログやサイトに、他人のゲームタイトルリンクを貼った場合

先述のとおりタイトルとリンクに著作権はありませんので、問題はありません。

同様に、タイトルリンクスクショを貼った場合

 先述の通りスクショには著作権があるため、スクショが加わると著作権侵害となってしまうかと思います。

 しかしレビューなど、自分の考えを述べる場かつ必要不可欠なサイトへの掲載は、出典を明示すれば引用にあたるので侵害にはなりません。(引用については次の記事で詳しく説明します)

ウェブサイトの画面キャプチャは、著作権法上の複製権(著作権法21条)を侵害し、また、これをブログに掲載することは公衆送信権(著作権法23条)を侵害する可能性があります。

(中略)

著作権侵害になる可能性があると上で述べましたが、実は条件をみたしていれば、著作権の許諾を得ることなく、ウェブサイトやアプリのスクリーンショットを引用(著作権法32条1項)としてブログに掲載することは可能です。

出典:「著作権トラブル解決のバイブル!クリエイターのための権利の本」株式会社ボーンデジタル、2018年 54頁

 紹介サイトのように自分の書いた文章がほとんどなく、タイトルとリンクとスクショだけを載せている場合は無断転載に当たってしまう可能性があります。

 またスクショ以外にも、公式が作った宣伝画像や、作品紹介文も著作物の一部なので無断で使用してはいけません。(引用除く)

利用規約がない、言及がない

『フリー素材は自由に使ってOK?』
これらは、「著作権者から提示された条件に沿っている限りにおいて」無料で使用することができます。もし、その条件に沿わない場合は使用することはできません。

出典:「著作権トラブル解決のバイブル!クリエイターのための権利の本」株式会社ボーンデジタル、2018年 60頁

 先述のように「原則NGなのを、作者が限定や条件付きで許可している」のが利用規約になりますので、規約が存在しなかったり言及がない場合はNGになると思います。

 例えば古い作品で実況許可に関する言及がない作品を実況した場合、法的には著作権違反です。

 ただし著作権違反は親告罪であるため、作者本人から申し立てがない場合は問題にはなりません。こういった場所での転載は作品の宣伝にもなり作者側にもメリットがあることから、黙認されやすいです。

 作者本人から申し立てがあったら、素直に消しましょうね!!

感想文を、自分のブログに掲載してもいい?

 感想や作者へのメッセージが著作物になるのは上述した通りです。

 そのため、他人の感想文(著作物)を勝手にブログに転載するのは著作権違反になります。

読書感想文などの文章も著作権で保護されます。ですから、他人のブログから感想文を無断で書き写すと、著作権法違反になります。

出典:宿題は計画的に!|こぴーらいとビギナーズ|一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)

 ですので「羅生門のいろんな感想をまとめてみた!」とかはアウトですね。ファンアートも同様です。

 ただひとつ調べても分からなかったのが、「自分の作品に対していただいた感想やファンアートは好きに使ってもいいのか?」ということ。

 もし感想が二次的著作物に当たるのであれば、感想を書いた人と作品の作者の両方に同じ権利が発生するので大丈夫だと思うんですけど……もしグッズでファンアート集を作ろうと思う方がいたら、用心したほうがいいかもしれません。


途中で「引用除く」ってのがいっぱい出てきたけど、何なんだ?

著作物にあたるなら勝手に使っちゃダメって説明したけど、引用の範囲内なら無断で使っても許されるんだって。
条件があるみたいだから、次の記事で詳しく説明するよ。

 著作権コラムの記事はカテゴリーにまとめてますので、ご覧ください〜

 次の記事はすぐ出します……

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