「コーヒーって、甘いですか?」主題歌ライナーノーツ

 今回は、主題歌「break time」の、ガチライナーノーツ!本当のライナーノーツ!ただしセルフ!

 楽曲聴きながら読んでね。

主題歌制作の経緯

 これまでテイビのメイン作品「サクラの白書」ではOP,EDを作っていましたが、それ以外のサテライト作品についてはメイン作品に費用を集中させるために外注をしないという制限をしていました。

 そのため今作も主題歌は作らない、と決めて制作を進めていたのですが、長い制作期間の中で「作りたい」「でもそんな余裕は……」を行ったり来たり。

 今作は大きな事件も起こらないし、弾けた出来事もないので、最後に主題歌を流さないと締まりがないので、曲は依頼できなくても歌素材でなんとかならないかなと探したりしていました。

 前回のブログの通り、制作中は日常的な雰囲気の楽曲を聴きながらシナリオを膨らませていたのですが、日常的な楽曲って素材ではなかなかなかったんですよね……。変に感動的になってもいけないし、勇ましくなってもいけない。

 結局妥協したくない、ということでオリジナル楽曲を作ってもらうことを決めました。

 そしてテイビは物騒な作品ばかりなので、「日常的な主題歌を作れるのは、きっとこれが最初で最後!!フウウウウ!」という理由もありっちゃあり。きっと今後作られるであろう主題歌群と合わせても、「break time」は平和すぎて逆に異色の存在になると思います……。

サークル作品全体に対しての思い

 主題歌を作ったもう一つの理由として、サークル作品全体のクオリティを上げなければという思いもありました。

 テイビはサクビブを作ることをメインとしつつ、短期的に作りたい作品も作って、そこからサークル自体のファンを獲得していけたら、という狙いで、メイン作品、サテライト作品という枠を設けています。

 しかし近年は長編より、短編かつ完結済の作品が人気であること、そして掲載サイトや参加コンテストの影響もあり、プレイ数や感想の数がどうしてもサテライト作品に寄ってしまうという逆転現象が起きていました。

 もちろんサテライト作品を多く楽しんでいただけているのは嬉しいのですが、肝心のメイン作品に繋げていけていない、そしてサークル自体の認知もないのでサテライト作品同士でもプレイ層を獲得できていない。つまりテイビの目標の一つであった「テイビの作品なら面白いよね」という信頼を得られていないのでは、という懸念がずっとありました。

 この状況で、「サテライト作品は制作期間、費用を抑える」という制限をかけている場合じゃない。メインじゃなくてもかけるところはかけて、本気を示さないと、今後の作品すらプレイされなくなる。そう思って、「じゃあ、元々作りたいと思っていた主題歌を作ろう!」となったのも大きいです。

作曲(しおかぜミュージックラボ様)

 作曲は、サクビブの楽曲でもお世話になったしおかぜミュージックラボ様にお願いしました!

 当初依頼先は、これまでお世話になったことのない方にお願いしようかと思っていました(なるべくいろんな方に外注して、外注する側のスキルも上げていきたかったので)。しかし主題歌を外注する!と決めたのが割と作品完成が近づいたギリギリの頃で、なかなかリサーチする時間が十分に取れませんでした。

 そして作曲家さんのサンプル楽曲を聴く中で、今作で作っていただきたかった日常的な楽曲を公開しているところがなかった……。サンプル楽曲や実績として公開されているのは、アニメ的なポップやロックか、バラードばかりで、いわゆるノーマルなJ-POP風を作っている作曲家さんを見つけることができませんでした。もちろん依頼されたら作れるよ!という方も多いでしょうが、得意分野がありますし、確実に作ってもらえるか、一度依頼したら賭けになってしまうので……。

 その点、しおかぜ様は頒布しているBGM素材の中に日常的な楽曲が多く、これまでのテイビの作品でも好んで使わせていただいており、確実にイメージしている楽曲を作っていただける、という安心感があったので、お願いすることにしました。デモを聞いた瞬間に「お願いしてよかった……!」とガッツポーズしました。

曲について

 しおかぜ様には参考楽曲を提示した上で、「詞が少し暗めなので、それに引きずられないように明るく」とお願いしました。ちょっと後ろ向きな詞と、明るめの曲が合わさることで出来上がる、いい塩梅の曲が好みだったので、それを目指しました。

 出来上がったデモは、ピアノの和音が心地良くも、夕暮れを感じさせるすんごいいいメロディ。もう、これはこれでグッときていい!!しかしそれでも作品にとっては重めかな?と相談しながら、キーをあげたり、音を足したり引いたり、いろいろ試していただきながら、最終的な形が出来上がりました。

 あと依頼時には書かなかったのですが、前回のブログでも書いた「軽快でステップを踏みたくなるような曲だといいな」という思いも、書いていなかったのに叶えられて、本当に素敵な楽曲を作っていただいたなと思います。

作詞(らんぴ)

「break time」

広げすぎた地図 折り畳んで
気づけばひとり ため息ついた
出会いと別れ わた雲みたい
どちらが多いか 数えてみたの

夢で再会したあの人 今は何してるかな

どんな今日でもその日なりのリズムがあるわ
ドラマチックな出会いもない
人と違う道歩いても
幸せ感じる何かが欲しい

きっと誰もがその人なりのメロディ奏でてる
心は不器用なままだけれど
私の好きなステップのまま
明日も笑って歩いてみよう

あなたは笑ってくれるといいな

「主題歌作ることに決めたけど、結局歌詞完成してないんだよなー」と思って開いてみたらいつのまにか出来上がってた歌詞。

詞先だったのですが、これまで以上にメロディのことを考慮しない詞を書いてしまい、特に「人と違う道歩いても〜」の部分は詰め込みもいいところ。まともなメロディになる気がしなかったのですが、すんごいいいメロディを当てていただきました……すぎょい……。

 コーヒー作品の主題歌ですが、コーヒー系の単語はひとつも入っていません!

 主題歌には2種類ありまして(私論)。

  • 完全に作品に寄せることで作品を深掘りする「あてがき」タイプ
  • あえて作品に寄せないことで作品の解釈の幅を広げる「楽曲独立」タイプ

 今回は「楽曲独立」タイプです。これまでのサクビブの楽曲はあてがきタイプだったので、これまた新鮮ですね。

 あまりにも作品がコーヒー推しすぎて、主題歌までコーヒー要素を入れるとくどいかなというのと、グルメ作品という性質上人間の内面部分を描くことができなかったので、そこを主題歌で補完できたらと思い、あえて作品とは全く関係ない歌詞にしました。個人的に、解釈の幅を広げる主題歌が大好物。
 といいつつ全く関係ない歌詞って何書けばいいんや、と思いつつ……

 作品制作中にヘビロテしていた「now and then」(松たか子)という楽曲が、松さんの歌手活動10周年を記念してそれまでを振り返る歌詞になっていたので、じゃあ今回の曲もテイビのこれまでを振り返るような歌詞にしてみよう!と思い立ちました。

 ちょっと後ろ向きな感じとか孤独な感じも影響を受けつつ、個人サークルとして休みを挟みながらマイペースに活動を続ける、7年目のtales&Vividを表す楽曲になったかと思います。

 ヘビロテしていたもう一つの曲「ハジマリズム」(ジョナゴールド)のイメージも強くあったので、「リズム」「メロディ」「ステップ」といったワードも入れてみました。

その人なりの幸せ

 個人的に一番好きなフレーズが、1番サビ終わりの「人と違う道歩いても 幸せ感じる何かが欲しい」という部分。

 7年活動する中で、イベントにも参加したりツイッターで繋がったり、いろんな方と出逢いと別れを繰り返してきましたが、(全く後ろ向きな意味ではなく)「自分の考えやスタンスは、なかなか他の人と混ざるタイプのものではないんだな」ということを感じました。

 実生活においても、周りと違う生き方をしている、考えを持っている自覚があって、人と交われば交わるほどその隔たりは濃くなる。それに寂しさは感じつつも、今の自分の生き方に満足はしていて、自分に合っているのもそれだとわかっていて。でも一般的な「幸せ」とは縁がない。

 じゃあ何が自分を幸せと感じさせてくれているのだろうと考えると、それがコーヒーだったり、アイドルだったり、毎日のほんの小さな喜びだということに気づいたわけです。

 

 たぶん一般的な「幸せ」の形に当てはまらなくて悩む人はたくさんいるんじゃないかと思うのですが、それでもその人なりの生き方で幸せになれる世の中であったら、そのためには、日常のほんのささやかな「何か」という幸せをせこせこと拾い集めて、ちまちま噛み締めたら、少しは笑えるんじゃないか。

 そんな希望を込めて歌詞を完成させたとき、「『コーヒーって、甘いですか?』という作品の核になるのは、これじゃないか?」と思って、半ば逆輸入のような形でシナリオにも取り入れました。

 

 シナリオを書く上で意識した「恋人、家族、友人関係を出さない」という部分は歌詞にも取り入れています。

 「夢で再会したあの人」も、「笑っていてほしいあなた」も、特に恋愛感情があった相手というわけでもなく、道で親切にしてもらったとか、バイト中にお話しした子どもだったりとか、そんなささやかな出会いと別れの中で、その人の幸せを一寸でも願える人生であれたらいいなという感じです。

 作品とこの楽曲を通して、コーヒーであってもなくても、身近な幸せを大事に思えるよう感じていただけたら嬉しいです。

(余談)長すぎた主題歌

 涙を流しながら楽曲が納品され、「よし、エンドロールに盛り込むぞ!」とスクリプトに向き合ったものの、主題歌が長すぎてエンドロールに収まらない。

 ……あれれぇ?この曲、ワンコーラス+ラスサビまであるぞ……?

 あたりめえだ。ラスサビまで歌詞を書いて制作お願いしたもん。

 

 これは個人サークルの宿命なのですが、素材以外をすべて一人で担当するゆえに、「シナリオ:らんぴ」「立ち絵:らんぴ」「スクリプト:らんぴ」と個人名連発になってしまうため起こってしまう。

 エンドロールの間が持たない問題

 

 通常は30秒ほどで終わってしまうエンドロール。ただでさえ毎回苦労しているのに、今回の主題歌は3分近くある!!もはや途中で切るしかないけど、せっかくいい曲書いていただいたのにな、フルで聞いてほしいな……

 と悩んだ結果、苦肉の策として採用したのが、「本編に主題歌を食い込ませちまえ!」。つまり、エンドロールに入る前、エピローグ部分からBGMとして主題歌を流し始めるという方法です。

 ドラマではよくあるやり方ですが、ノベルゲームでは何が問題かというと、本編のプレイ速度が毎回違う(エンドロール突入時に主題歌がどこまで再生されているかが変わる)ので、エンドロールと主題歌のタイミングを合わせられない→エンドロール終了時に主題歌が中途半端に終わるor曲が一周してループしてしまうんです。

 せっかくいい曲なのに、そんなの許せない!!

 なので、エンドロール突入時に主題歌の残り時間を計算して、それに合わせてエンドロールの進む速度を調整するというヤバいスクリプト作業を行いました。

 ですので普通にプレイしていれば、エンドロール終了と同時に曲もジャーンと終わるようになっているはずです。

 おかげでドラマ並みの没入感を保てたのでは……いやあ、頑張った……。

 

 といいつつ、やはり本編をプレイしながらの主題歌では集中して聴くことができないですし、フルで流れないパターンもある(しばらくプレイを放置してたりするとフェードアウトで終わります)ので、ちゃんと曲自体を楽しめるよう、記事冒頭の通りYouTubeにアップロードしました。また、作品内でもクリア後に説明書から主題歌を再生することができます!

 とにかく、曲だけでも聴いてください。3分で聴けます。

主題歌に力入れたいね

 って思いました。今後のテイビの作品でも。

 過去記事でも書いてる通り、どの作品も制作中はiPodに入っている曲で「勝手に主題歌」プレイリストを作り、ヘビロテしながら作品のイメージを固めていっているので、テイビと音楽の関わりってすごく強いと思っています。作品本体自体も、物語のリズムをかなり大事にして作っているつもりですし。

 主題歌があると作品自体が補強されたり、広がったり、魔法のように作品の捉え方が変わるのが、商業においてもすごく好きなんですよね。

 

 もちろん力を入れられるなら、グラフィック、BGM、全てに力を入れたい思いがありますが、それらは外注すると10万単位でお金がかかってしまいますし、かといって一部だけを外注することは統一性の問題で難しいので、どうしてもお手製だったり素材をお借りして済ませることしかできないのが現状です。

 (今回外注したような)主題歌やロゴであれば、単発での依頼で済むため予算もコントロールできる上、それ単体でも楽しむことができます。ぶっちゃけ、作品に興味がなくても曲だけ好きだから聴いてる!でも全然OKなわけです。

 

 あとらんぴ個人の好みの楽曲が、一般的にゲーム主題歌として歌われるジャンルと若干違うので(しかも基本アイドルポップ)、楽曲そのものが他のサークルとの差別化にもなるのかなあと思っています。何より自作品の主題歌=推し楽曲になるので!推しが増えると楽しい!

 そんな感じで、主題歌作りたい、ロゴ作ってもらいたいって思った時は、なるべくケチらずに熱を注ぎたいなって思いました。

 

 というわけで、以上!主題歌「break time」のセルフライナーノーツでした!

 次の記事は、ここでもちらっと書いた、テーマの部分のお話になるかな……たぶん……

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です