同人ゲーム著作権コラム③引用について学ぶ〜無断引用なんてない?!〜

今回は他人の著作物を自分の何かに載せる「引用」「転載」の話と、著作権の発生する対象の話です!

ゲームに関係することといえば……ブログのレビューはどこまで載せていいか、とか?

そうだね。簡単に結論から言うと……

「無断転載禁止」と書かれていても、引用であれば著作者に無断で掲載利用してもいい。

という話だよ。

 てなわけで。

 そもそも引用とは「条件さえ満たせば著作者に無断で著作物を利用できる」という、著作権侵害の例外にあたる行為だよーという説明をします。

引用の条件

①不特定多数に公表された著作物であること

 個人宛に送られた手紙などは公表されていないため、著作権はあっても引用することはできません。

②主従関係

 例えばブログの場合、あくまで記事のメインはブログ筆者の主張であり、引用部分はそれを補足するサブ要素でなければいけません。

③明瞭な区別がなされていること

 引用元の出典や作者を明示したり表記を工夫して「この部分は引用ですよ」とわかるようにする必要があります。

④引用の目的上正当な範囲

 つまり必要最小限にしましょうね、ということ。

⑤改変しないこと

 引用の内容を変えてはいけません。著作物には同一性保持権があり、許可なしに作品の改変を行うことはできません。これは引用にも適用されるようです。


 これは文章に限らず、イラストにおいても上記の条件を満たしていれば引用として認められます。他人の画像を無断で載せたら問答無用でアウトかと思ってました……。

たとえば。

出典:漫画「NARUTO」(作:岸本斉史、集英社)

 ネタツイで有名なこちらの画像。

 上での載せ方として、出典元を明記していること、そして著作権について説明するための一例という真っ当な目的で載せているため、「引用の目的上、正当な範囲内」として認められるんじゃないかなと思います。

 また記事の主旨をわかりやすく伝えるためのサブ要素という使い方なので、主従関係もばっちり!……だと思う。

 しかし一方で、Twitterでよく見られるのは、何気ないツイートにこの画像を載せたり、文章の代わりとしてリプに吊り下げられる使い方。これらはほとんど「NARUTOの一コマです」とは書いていませんし、そもそもこの画像を載せる必然性がありません。よって引用ではなく無断転載、著作権違反となります。

 またブログなどでアイキャッチ的にアニメのスクショを載せることも同様です。アニメのスクショでなくともフリー素材を使えばいいのですから。(「フリー素材よりも映えるから」は正当とはいえない)

 もしアニメのレビュー記事だった場合は、スクショがあるほうが伝わりやすく、フリー素材などでは代用が効きませんから、出典さえ書けば引用になります。

 要するに、素材的な使い方で載せるのはアウトなんだと……!

 つまり引用のポイントとしては、自分の主張を示すために、どうしてもその画像が必要(有用)か」「出典を書いているかが重要なわけです。

SNS等の引用について

 ちなみにTwitterで「無断引用RT禁止」とか書いてたり、noteで他人のツイートを引用するのを見かけますが、引用RTや Twitterの埋め込み機能、つまり公式の機能を利用した引用についてはTwitterの規約上で許可されており、ツイート投稿者はTwitterを利用した時点でそれに同意したことになりますので合法です。

 YouTubeについても埋め込み機能でブログに埋め込むことは許可されています。

 しかし埋め込み機能を利用せずに引用するとアウトになる可能性があるのでご注意を。実際にツイートをスクショで引用して著作権侵害の判決が出た例があります。

※ただ、埋め込み機能の有無で違反とするこの判決については「規約で引用の方法を制限するってどうなの?」と賛否あるようです。


 個人的な考えとしては、示された引用元を辿れるかどうかが重要な気がします。

 上記の例の場合、Twitterは流動的コンテンツですから、時が経てばスクショから元のツイートそのものを辿るのは難しくなります。画像だと引用と見せかけて実は加工して捏造しましたってのも容易ですし。

 これが引用元が書籍の場合、書籍さえ見つければ引用元の確認が確実にできます。もちろん絶版もありますが、ネットと違ってこの世から消え去るわけではないので、簡単に消せるツイートよりは捕まえやすいはずです。

 ですので書籍から引用する際も、読み手が引用元を特定できるような出典の書き方をすればよいのかなーと思います。

本の表紙やゲームのスクリーンショット

 実はブログなどに本の表紙を載せること自体は複製権の侵害にあたります。本の表紙にもイラスト同様、著作権が発生しているからです。

 しかし例えば、感想ブログなどの場合、載せた方が効果的ともいえるため、ちゃんと何の作品かを明示して引用すれば適切な引用と認められるようです。

 文献では言及はありませんでしたが、この流れで考えると、ゲームのスクリーンショットも同様に主従関係を守って何の作品か明示すればブログなどへの掲載は可能と思われます。主従関係は大事!

Q. 本や新聞、雑誌でよい記事を読んだので、紙面を撮影して自分のブログやFacebookで紹介したい! 表紙画像をブログで使いたい! でも、無許可で掲載してしまって大丈夫なのでしょうか?

 例えば、簡潔な解説文だけを加えて、雑誌や新聞の記事を1ページ丸々撮影した写真をブログやSNSに掲載する行為は、引用の範囲を大きく超えると考えられます。「出典を明記すれば引用になるのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、このような掲載では引用の条件である主従関係をみたしていないので、著作権侵害になる可能性が高いと思われます。

出典:「著作権トラブル解決のバイブル!クリエイターのための権利の本」株式会社ボーンデジタル、2018年 90頁

実況で商用利用不可のフリー素材が映り込んでた場合って……

 ゲームにはフリー素材が多く使われていますが、スクショや実況で映り込むことがあります。著作物の映り込みについては以下のように言及がありました。

スクリーンショットや生配信における著作物の写り込みについては、同改正※令和2年改正 において著作権制限規定が適用される(著作権侵害から除外する)こととなりました

出典:北村行夫・雪丸真吾編「Q&A引用・転載の実務と著作権法 第5版」中央経済社、2021年 168頁

 例えば配信などでミッキーのTシャツが写り込んでも大丈夫、ということのようです。

 んー、つまり。フリー素材も著作物ですから、映り込みはOKという解釈でよさそうです。

 ということは……もし作品が収益化されているチャンネルに実況されていて、そこに作品内で使用されていた商用利用禁止の素材が映り込んでいた場合は、規約で映り込みに言及がない限りは著作権侵害にはあたらないと考えていいんでしょうか……?

商用利用禁止の素材を使用する作品の実況で収益を得てもいいかは、規約で言及されてることってあまりないよね?

うん。
それで素材を利用する側のゲーム作者さんが慌てて自作品を実況禁止にするのを最近よく見かけるよ

でも、それで収益を得るのって作品の作者じゃなくて、他人の実況者だよね?
実況動画だと画像素材はかなり荒くなったりするし、直接実況画面に素材をあてはめてるわけでもないし。
実況に作品内の素材が映り込むのは、そもそも素材を利用している状態といえるの……?

実況が盛り上がってきたのはここ数年のことだし、実況に馴染みのない人もいるだろうから、そもそも実況のことを念頭に置いて規約が作られてないことも多いと思うよ。古いサイトは特に。
素材主さんによっても「商用利用禁止」の捉え方は異なるだろうし、聞けるなら直接素材主さんに聞くのが一番だね
「商用利用禁止」→「収益化実況も禁止」が絶対とは、現状はまだ言い切れないと思うよ、個人的には。
あと画像か音楽かでも変わるかもしれないし……難しい問題だね。

 とりあえずうちの作品では、商用利用禁止の素材は使わないか、ちゃんと明言されている素材を使うようにしてます……。

無断転載禁止でも引用はOK?!

 たまにゲームの利用規約で「スクショ載せないでね」とあるじゃないですか。その場合ダメなんじゃないのと思うのですが、なんと……

一方、引用の条件を満たしていれば、たとえ「無断転載禁止」と表示されていても引用は可能です。単に「無断転載禁止」という表示がある場合、著作権法で認められた適法な引用まで禁止する趣旨ではないと考えられます。

出典:「著作権トラブル解決のバイブル!クリエイターのための権利の本」株式会社ボーンデジタル、2018年 90頁

サイト上でどれだけ「無断引用禁止」と書かれていようが、上記引用要件を満たす限りは無断で使用可能なのです。

出典:大事なことなので何度でも言います。一定の要件を満たせば無断引用は適法です。(STORIA法律事務所ブログ) 

 規約で禁止されていたとしてもあくまで個人レベルのお願いであり、引用の条件を満たして載せれば著作権侵害にはあたらないようです。

著作者の気持ちも考える

「単に「無断転載禁止」という表示がある場合、著作権法で認められた適法な引用まで禁止する趣旨ではないと考えられます」とあるけど、引用が適法だと知らずに「とにかく載せないで!」ってつもりで書いてる人もいるんじゃないの?

確かにそうだね。誰でも創作を発表できる世の中で、引用のルール含め、全員が著作権をちゃんと理解しているわけではないと思うよ。実際僕らも今回調べて、初めて知ったことの方が多いし。
特に「無断転載禁止」とかありがちな著作権のワードは、何となく使ってる人も多いだろうし、同じワードでも人によって意味や度合いが違う可能性もあることは頭に入れておいた方がいいと思う。

自分で規約を作るときも、なるべく誤解のないよう細かく書いたほうがトラブルを抑えられるね。「著作権法で認められた引用も含め、無断転載禁止」とか。

著作権法では問題がなくても、作者さん的にされたら嫌なこと、不都合なことはあるよな。
まずはそれぞれの規約を大事にする。規約でわからない部分は著作権法に準じる、作者さんの意図を汲み取るって感じがいいと思う。
規約から作者さんの意図を汲み取るのは簡単とは言えないけど……汲み取れなかった部分で認識のすれ違いがあったとしても、責め合いすぎず、お互い気持ちよくなれる対応をしたいね。

作る側も、利用する側も、遊ぶ側も、みんな素人だもんね。
著作権だけじゃなくて、互いの意思を尊重していきたいな。


 というわけで条件さえ守れば無敵に見えてしまう引用の話から、著作者それぞれの感情のお話までしてしまいました。

 誰でも作れる遊べるな同人ゲーム界ですから、規約を読む、守る、怒られたら謝るはもちろんですが、規約をわかりやすくしたりと互いに歩み寄れるように心がけていきたいなと思います。いい感じに終わった。

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