同人ゲーム著作権コラム①フリゲ掲載サイトの規約について考えてみた
※2022/5/16公表権についての記述を訂正追記しました
※旧ブログに掲載している内容と同じものです。
らんぴです!
「著作権って何?」
「著作権って無敵?」
「何となく使ってるこの用語って本当はどういう意味?」
みなさん分かってます?らんぴは分かってない。作ってる側なのに!
著作権が何なのかよく理解しないまま、ぼんやりとした概念として分かった気になってる感覚があるんですよね……。
作品を作ってる人間として、そして利用する人間としてちゃんと理解しなければ!ということで、著作権の本を読んで勉強し始めました。これからしばらく、書けるところから少しずつ記事に書いていきたいと思っています。
(著作権は書籍によって解釈が異なる部分もあり、絶対的なものではないようです)
今回は掲載サイトのゲーム投稿に関する利用規約についての話!一番身近でかつ解釈間違ってても影響なさそうなやつです笑。ゆるーく読んでください。
その前にそもそも著作権って、具体的にどのようなものがあるの?
著作権の種類
著作財産権
著作物を排他的、独占的に利用することのできる権利。複製権や頒布権、翻訳権などが含まれます。
他人への譲渡や相続が可。他人に利用させてライセンス料を徴収することも可。
要するに著作者の経済的利益を守るための話ですね。
著作者人格権
先に述べた著作財産権と違い、他人への譲渡や相続ができません。したがって必ず著作者自身が保持している権利です。
下記の3つにより成り立ちます。
①公表権
未公表の著作物(著作者の意に反して公開されたものも含む)について、著作物をいつ、どのように公表するか、しないかを決める権利。
この権利のみ、著作財産権を譲渡後は著作者は公表権を主張できなくなる。
②氏名表示権
著作者の氏名を表示するか、どのような名称を用いるかを決める権利。
③同一性保持権
著作者の意に反して著作物を勝手に改変されない権利。
規約を読んで理解してみる
というわけでここからは各フリゲサイトのゲーム掲載に関する利用規約を読んでみます。
フリゲサイトって気軽に作品を載せられて便利ですけど、実は規約でしっかり著作権について触れられているんですよね。しかも「素人相手だし著作権守ってくれるんでしょ?」と思ってたら意外とそうでもなくて、何が書いてあっても投稿した時点で同意したことになるから注意が必要です。
今回取り上げるのは「ふりーむ」「フリーゲーム夢現」「ノベルゲームコレクション」の3つ!
※以下いろいろ書いてますが、問題提起をしたいわけではなくあくまで規約を知ろうというきっかけになればな〜と思ってる程度ですので悪しからず……。
素人知識なので、間違ってるところとかあったら言ってください!
ふりーむ
「ふりーむ!」の利用規約はめちゃくちゃ長いです。あれを全部読んで理解してる人はめちゃくちゃえらいと思います。
さて、作品の掲載については以下のような項目があります。(抜粋。色付けは当方で行ってます)
7.ふりーむ!に掲載されたコンテンツについて
ふりーむ!では、ユーザーが送信(発信)したコンテンツ(以下、コンテンツ)を不特定多数のユーザーがアクセスできるようになります。このような不特定多数のユーザーがアクセスできるサービスに対してユーザーがコンテンツを送信(発信)した場合、ユーザーはふりーむ!に対して、当該コンテンツを日本の国内外で無償で非独占的に使用する(複製、公開、送信、頒布、譲渡、貸与、翻訳、翻案を含む)権利を許諾(サブライセンス権を含む)したものとみなします。また、ユーザーは著作者人格権を行使しないものとします。コンテンツを残したまま退会した場合、これらのコンテンツの権利をユーザーは放棄したものとし、今後のふりーむ!の最新の規約に随時照らし合わせて利用されます。
青地の部分は著作財産権を許諾する内容で、「複製」「送信」などの文言が含まれていることから、「ゲームデータをふりーむが他の場所で配布してもいいですね?」ということになるかと思います。規約内では例として「ミラーサイトにも載せてますよ」とありました。あとかなり初期に、コンテストの受賞作を集めたものを配布したことがあるようです。翻訳も著作権の一部で本来許可なしに行うことができませんが、この規約では許諾することになってますね。
また過去行われていたふりーむコンテストには「参加作品は公開停止不可」の規約がありました。公開するかしないかの自由は公表権に当たりますので、コンテストに参加するとこれも放棄することになります。
(訂正:公表権は「未公表の著作物」に対して有効なため、すでに公開されたものについては当てはまりません)
またTwitterなどでの宣伝にふりーむが文章や画像を使うことも、上記のコンテンツ利用に含まれていると考えていいかと思います。
厄介なのが赤字の部分、「ユーザーは著作者人格権を行使しないものとします」の文言です。実は公表権も著作者人格権の一部ですね。加えて同一性保持も含まれますから作品の改変を許すことになります。
……あれ?しかし著作者人格権は譲渡できないのでは?
しかし「行使しない」というのが肝で、どうやら「権利は保持しているが行使しない」という捉え方のようです。著作者人格権を保持し続けるとなると、利用に際して不都合が生じるため、こういった放棄の意思表示をしてもらうことは可能らしいです。
個人的には「行使できないって実質譲渡してるのと同じじゃん」って思うのですが……。
まあ要約すると、「データ配ったりいろいろしても文句言えないよ?」(口悪)ってことだと思います。著作権のほとんどを放棄することになりますからね。著作財産権全体は譲渡していないので、さすがに作品を売ったりしてお金を得ることはできないと思いますが……。
現在のふりーむは、作品を掲載することとTwitterでの広報、小企画の開催のみ行なっており、データの配布などは実際には行われていません。
なのでいろいろ著作権を放棄する規約になっているとはいえ、それを気にしてびくびくすることはないかと思います。
ただ行使していないとはいえ、規約の内容だけ見るとちょっとやりすぎじゃない?感は……。
フリーゲーム夢現
夢現使ったことないけど規約だけ覗いてみたよ!ふりーむよりは文量少なめですね。
第4条 著作権等について
本サイトから閲覧可能なデータ(以下コンテンツと称す)の著作権は、フリーゲーム夢現が保有しております。
しかしながら、紹介記事を構成するコンテンツの中でも、ゲーム製作者様自身がアップロードされたゲームデータ(以下ゲームファイルと称す)についてはこの限りではありません。
フリーゲーム夢現は、ゲーム製作者様のゲームファイルに関する著作権・知的財産権を奪うようなことはいたしません。あくまでもコンテンツ提供に際しての著作権・知的財産権が該当いたします。(フリーゲーム夢現ゲームの投稿規約より抜粋)
つまりゲームデータの著作権は製作者にあり、作品ページの内容についてはサイト側に譲渡することになります。「コンテンツ提供に際しての」=つまり作品提供に必要な情報のみ、Twitterの広報などに使用するということでしょうか。
「ゲームファイルに関する著作権・知的財産権を奪うようなことはいたしません」というのはおそらく、ふりーむのようにゲームファイルを複製したり配布したり翻訳する権利までは求めませんということだと思います。
ゲームの公開停止についても制限はないようです。
ノベルゲームコレクション
ノベコレの利用規約は全体的にかなりあっさりしています。
著作権への言及は以下の1行しかありません。
投稿されたゲームの著作権は製作者に帰属します
(ノベルゲームコレクション利用規約より抜粋)
※追記:上記の項目は記事執筆時点(2022年2月)のものです。現在は変更されており、以降述べている問題点は改善されています(後述)
またQ&Aページにも、
Q:ノベルゲームコレクションに参加することで、ゲームの著作権などはどうなりますか?
完全にゲーム製作者に帰属します 本サイトの運営者に移る権利は一切存在しません。(ノベルゲームコレクションQ&Aページより抜粋)
とあります。運営者に移る権利は一切存在しませんと断言されているのが安心ですね。
実に単純明快で、この自由度がノベコレの見どころではあるんですが……。
しかし実態を見てみると、ノベコレは他のサイトと比べても画像等の流用がかなり多いサイトです。
トップページのコンテンツであるノベコレニュースには作品等の画像や紹介文が使われますし、投稿されたレビューコメント(レビューにはそれを書いた人に著作権が発生します)も紹介という形で転載されます。これらはAIによって構成されるので、不自然な形でトリミングされてしまうこともあり、場合によっては同一性の保持に関わる……?(さすがに紹介文ごときじゃ問題にはならないと思いますが)
引用元を示せば無断転載とはならないのですが、同じサイト内なら暗に作品ページからの引用だと示すことになるのか、ちゃんと明記しないと引用にはならないのか。作品へのリンクはありますが……ここらへんよく分かんないです。ノベコレニュースがAIで動いてるって知らない人もいらっしゃいますし。
そもそも細かく言うと一覧のサムネイルとかキリがないんですが、さすがにそれは投稿する時点でどう使われるか分かって投稿するはずで。その事前の暗黙の了解がどの辺まで通用するかって感じです。ノベコレは他の2サイトと比べても、コンテンツの展開の仕方が独特なので……。
またティラノフェスになると、バーチャルフェスの会場やエンディング動画に作品画像が利用されます。ファンアートもですかね?これは確実に二次利用にあたると思います。
ノベコレニュースもバーチャルフェスもここ最近になって始まった新コンテンツですが、始まる前に「使います」という告知があったわけではなく、それ以前に投稿された作品の利用についてもどういう関係になるのか……
(どっちにしろ許諾はしてないことに変わりはないですが)
うーん……規約が緩いのが売りなのは分かるけど、これは1行「コンテンツに使います」って書いといた方がいいんじゃ……?
著作権は親告罪なので、トラブルになってない以上問題はないんですが、言われてしまうと結構危うい気がします……。ノベコレは善意で成り立ってる部分が多いから、そこを崩されると心配です。
そういえば、もしこの後ノベコレさんが規約に「追加します!」と追記したりとか変更した場合、それ以前に投稿された作品にも規約が適用されるんですかね?これ気になる!
追記(2023年6月14日)
記事公開後に規約の改定が行われており、新たに著作権の項目が追加されていたようです。
4.著作権について
・アップロードされたゲームデータに関して、著作権はゲーム作者本人に帰属します。運営側が主張する権利は一切ありません。
・ゲームデータを除いた本サイトで閲覧可能なデータの著作権はノベルゲームコレクションが保有します。
・本サイトに投稿されたゲームの紹介画像、ファンアート、コメントについて、運営は加工して利用することができるものとします。
ただし、利用用途について投稿者から抗議の意思が示された場合は投稿者の意思が優先されることとします。(ノベルゲームコレクション利用規約より抜粋)※2023年6月14日時点
上記で述べた点についてはっきりと明記されておりました!
アーカイブを辿ったところ、改定されたのは2022年2月28日〜4月17日の間。旧ブログで本記事を公開したのが2022年2月11日、本ブログに転載・告知したのが同年4月10日でしたので、タイミング的に運営さんがどちらかの本記事を見て改定してくださったのかもしれません。
長らく気づかずに失礼いたしました……。
投稿者の方が利用を拒否されたらご対応くださるとのこと、やさしい。
まとめ
とまあこんな感じで、規約の在り方が見事に三者三様で面白かったです。それでも実態としてやっていることは現在はあまり変わりませんね。ノベコレがコンテンツ増やしてることくらい?
個人的な感覚としては、著作物を使うなら使うとちゃんと明記しておきながら、必要最低限の権利だけ要求している夢現さんが一番丁度いいなと思いました。やはり著作物を多く扱う大手サイトは、きっちり著作権について正しく書いてあるほうが安心ですし、なるべく持っている権利は渡したくないという気持ちもあります。
ただ画像や作品紹介の利用なんかは、二次創作がグレーゾーンとして見逃されてるのと同じで、実害を被ることがないので悪くない意味で黙認されている状態でしょうね。
実際にこれでトラブルが起きているのは見たことがないので、神経質になる必要はないと思います。
でも利用規約のことを理解できてちょっと安心しました。
サービスによってはヤバい内容のときもあるので、規約はちゃんと読みましょう!
著作権についてまだ触れてない大事なとこもありますが、それは追々の記事で絡めていきたいと思います〜。
↓著作権コラムの一覧はこちら
https://talesvivid.sakura.ne.jp/blog/archives/category/tyosakuken